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黒曜石か黒耀石か。

 

「コクヨウセキ」の「ヨウ」は、「曜」なのか「耀」なのかという話については、堤隆著『黒曜石3万年の旅』に、とてもよくまとめられている。

引用してみる。


明治期の考古学者である神保小虎・坪井正五郎、あるいは鳥居龍蔵は「曜」の字を用いた。またおそらく、自然科学系の研究者の大部分は黒曜石(黒曜岩)と記載するだろう。文学者のみならず地質学者としての顔を持つ宮沢賢治も、その文学作品の中で「曜」の表記を用いている。

一方、信州が生んだ偉大な考古学者藤森栄一は「耀」を好んだ。藤森らしい用字である。石器時代研究の第一人者である戸沢充則さんもあえて耀の字を用いている。……商売では雰囲気のある「耀」の字が好まれることも多い。


堤は、この後を受けて「耀」の字の方が、キラキラと輝き鋭い割れ口をもつイメージを彷彿とさせる語感があるし、字形が美しいといっている。

これは、おそらく「耀」派の多くの人が持っている感覚ではないだろうか。私も心情的には「耀」の方が美しいと感じる。

では、堤氏は「耀」派なのかといういと、そういうわけでもない。

もう少し引用してみる。


「曜」は常用漢字となっているため、辞典類・新聞・雑誌・放送などの黒曜石はすべて「曜」で統一されている。……しかし、常用漢字であるからという理由だけで「曜」を押し付けてしまうのは、いかにも文部科学省的な強制力としてはばかられる。


最後のくだりは、いかにも在野の碩学の面目躍如といった感じである。そしてここからの行動が、まさしくこの方が「碩学」であることを示しているように思えた。堤氏は、「曜」と「耀」について、辞書的なアプローチで本来の字義を調べることから始まり、「黒曜石」の文字が最初に登場する江戸期の『雲根志』であることから、この「原本」をどうしても見たいと思い立つ。原本とは、江戸後期の木版本のことであり、現在は、国立国会図書館、早稲田大学中央図書館など、二、三例が確認されているという。堤氏は、早稲田大学の貴重書資料室に許可をもらって、原本にたどり着いた。

(写真はイメージです)

この原本で、堤氏は、江戸時代には「黒曜石」もしくは「黒羊石」が用いられていたことを確認した。

その後、明治期になり鉱物学者・和田維四郎がObsidianの訳語として「黒曜石」の字を当て、これが学問的プライオリティーをもつ名称となる。

一方「耀」の用字は、明治期には散見されず、また大正期でも不明であり、「おそらくは昭和、場合によっては戦後」に一部使われだしたのではないか、と堤氏はいう。

そして、次のように結論づける。


「黒曜石」か「黒耀石」か、それぞれのこだわりはあるものの、以上のような用字用語法からすれば、「耀」の魅力的な書体を認めつつも、学問的には「曜」を用いるべきことは明らかだ。


あくまで堤氏の私見だとは思うが、非常にバランスのよい合理的な結論のように思える。

まぁザックリいうなら、

「学問的には黒曜石に統一した方が便利だし、それ以外なら、美しさや雰囲気重視で黒耀石でもいいんじゃない?」

といったところではないだろうか。

当サイトでは、この考え方に基本的には立って用字・用語しようと思う。

 

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