黒曜石の魅力に関する、これはかなり私見であるが、実にこの石はスタイリッシュだと思う。
黒という色は、非常に日本人には映える色である。
2012年7月、東京都現代美術館において、「Future Beauty 日本ファッションの未来性」展が開催された。
三宅一生や川久保玲、山本耀司らをはじめ、高橋盾や皆川明、廣川玉枝らまで、日本のデザイナー全37組による約100点の作品を展示する国内初の本格的な日本ファッション展であった。
この展覧会の骨子は、1980年代、パリコレを席巻した日本人デザイナーたち、三宅、川久保、山本らを中心に、ファッションの常識を覆した精鋭たちの活躍が余すことなく紹介されたことだった。
たとえば、山本耀司。
彼の名が広く世界にとどろくきっかけとなったのは、パリコレであった。
当時ダークすぎる反抗を意味する色としてタブー視されていた「黒」をあえて全面的に押し出し、ボロ切れのようなルックを表現、これは「黒の衝撃」として波紋を投げかけた。
これは2014ssのルックだが、テーマは「雨に濡れたような服」。このシンプルにして多様な耀きのある黒は、どこか黒曜石を彷彿とさせないだろうか。
また、「COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)」を展開した川久保玲。
黒、黒、黒。
この日本人デザイナーによる「黒の衝撃」は、日本人の黒志向を促した。
才能にあふれた著名人がこぞってこの黒を愛用したことも後押しし、
日本人には黒がよく映える、というイメージが定着したように思われる。
私は、黒曜石に見入るとき、この偉大なるスタイリッシュたちを思わずにはいられない。
このスタイリッシュさは、単なる薄っぺらいファッションではなく、知性を強烈にイメージさせるところに、その真骨頂があるように思えてならない。
黒い髪、黒い瞳、そして黒い衣装。
寡黙な中にも凄烈な攻撃性や邪悪を許さぬ毅然さが、この黒には表現されている。
縄文の世から日本人がこの石を好んで用いてきた背景には、黒という色に対する精神的親和性が無縁ではないのではないだろうか。
そんなことを思うと、縄文人のDNAが残る血液が沸き立ち、いつまでもこの石を見飽きないのである。